犬の拾い食いは、健康に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく早めに改善することが重要です。
この記事では、犬の拾い食いをなくすためのトレーニング方法を紹介します。
基本のトレーニング
ステップ① 室内でトレーニング
事前準備
このトレーニングを始める前に、以下のコマンドを犬に教えておく必要があります。
- おすわり
- まて
まずはいつもいる室内の落ち着いた環境で、以下の練習をしてみましょう。
飼い主は、トリーツを2つ(可能であればあまり好きでないモノと大好物の2種類)、手に隠し持っておいてください。
- 手に持った2つのうち、あまり好きでない方のトリーツを犬の前で落とす
- 犬が近づき拾おうとしたら「待て」と命令する
- 待つことができたら、「よし」コマンドで、手に持っているもうひとつの大好物トリーツを与える
これを繰り返すことで、目の前に口にいれたいものがあった時でも、すぐに拾う癖をなくせるようになります。
「待て」「おすわり」のコマンドに全然反応してくれない場合は、落としたおやつを足で隠して食べられない状態を物理的につくってみてください。この時は「よし」ではなく、アイコンタクトをとって飼い主にお伺いを立てたら、手に持ったおやつをあげます。
おやつが落ちてきてからすぐに飼い主を見るようになったら、コマンド有で練習しましょう。
ステップ② 外で実践
- 犬が何かを拾おうとした瞬間に「おすわり」もしくは「まて」の指示を出します。
- 犬が指示に従ったらトリーツを与えて、よく褒めてあげましょう。
- 散歩を再開し、これを繰り返します。
楽しみが完全におやつになれば、飼い主とのアイコンタクトがとれるようになり、拾い食いの頻度が減っていきます。よく目が合うことはリーダーウォークのしつけにも大変役立ちますので、アイコンタクトがとれた時にもよく褒めてあげるようにしましょう。
基本のトレーニングがうまくいかない場合の対処
情報を収集していろいろな躾方法を試しているけれど、なかなか拾い食いをやめてくれない…という場合もあると思います。この場合は、以下を確認してみて下さい。
対処法のまとめ
- トリーツ(ご褒美おやつ)を愛犬がもっと喜ぶものに変える
- 子犬の場合はもう少し大人になるのを待つ
- 散歩の回数を増やす
- 愛犬が落ち着くまで飼い主は動かない
- 気のすむまでニオイを嗅がせる
トリーツ(ご褒美おやつ)を愛犬がもっと喜ぶものに変える
基本のトレーニングがうまくいかない場合、トリーツが弱いことが多いです。散歩中のしつけは、"散歩"というワンちゃんの大好きな時間を上回る"食べたい欲"を掻き立てる必要があります。
そのため、愛犬の一番大好きなおやつを使ってトレーニングをしてみてください。散歩中にしか食べられないおやつを用意することも効果的です。
トリーツには、チーズ、ジャーキー、ドライフルーツ、ボーロ、豚耳、ジビエ、ちゅ~るなど、他にもさまざまな種類があります。ワンちゃんによって好みも異なりますので、まずは愛犬は何が好きなのかを調査して、一番の大好物を使ってあげてください。
子犬の場合はもう少し大人になるのを待つ
まだ"散歩"を知ってから間もない子犬の場合は、自動車やバイク、道に生える雑草、石、落ちてゴミもすべてがはじめて見るものだらけで、外で大興奮状態になってしまう子が多いと思います。(きっと、どんなに好きなおやつをあげても散歩の興味が勝ってしまってトレーニングにならないことでしょう…)
この場合は、もう少し"散歩"に慣れて、大人になることを待ってあげても良いかもしれません。まずは「おすわり」や「まて」などのひとつひとつのコマンドをどんな場所でもできる状態に仕上げることが、散歩中のしつけをスムーズにする近道です。トレーニングがうまくいかないからと焦らずに、ゆっくりと着実に進んでいきましょう。
散歩の回数を増やす
子犬でないワンちゃんで、トレーニングできないほどの興奮状態になってしまう場合は、散歩の頻度が少ないことが要因のこともあります。ワンちゃんにとっての"散歩"は私たち人間でいう遊園地に遊びに行くような特別なものです。たまに行くから楽しい場所であって、何度も行けばだんだんと興奮具合も落ち着き、トレーニングしやすい状態になります。
回数を重ねて落ち着かせることも手段のひとつになるので、現在が一日につき30分×2回のお散歩をしているのであれば、トレーニング期間中は20分×3回にするなど、回数を増やすことも検討してみてください。
愛犬が落ち着くまで飼い主は動かない
散歩を開始すると、ワンちゃんは興味のまま気ままに動き回ります。この時飼い主がワンちゃんに引っ張られる通りに歩いてしまえば、「好きなことをするには引っ張ればよい!」と誤った理解を生み、散歩の主導権を犬が持ってしまってトレーニングどころではなくなるので注意が必要です。
引っ張られているうちは、飼い主はなんとしても動かないようにしてください。はじめは飼い主が微動だにしなくても周囲をぐるぐる、ニオイを嗅ぎまわっていると思いますが、一通り嗅ぎ終えれば落ち着きを取り戻してくれると思います。この時、草むらや砂利道だとはニオイを嗅ぎながらの拾い食いが心配ですので、コンクリートの道など、誤飲の心配がない環境で落ち着かせましょう。そして愛犬が落ち着いてから、トレーニングを開始するようにしましょう。
一度口に入れたモノを無理やりとらない
口に入れたモノをすぐに飲み込んでしまうワンちゃんの場合は、「口に入ったモノを無理やり取られた」経験があることが考えられます。本来これは飼い主がやってはいけない行為です。犬の世界では、口に入れたモノ=自分のモノと理解するため、これをとられることは犬の絶対的タブーであり、敵意を生み出してしまいます。その結果、口に入れたモノを取られる前にすぐに飲み込む癖がついてしまうのです。
この癖がついてしまった場合は、先に飼い主への印象を変える必要があります。食事中に追加のフードを手から与えたりおやつは必ず手から与えるようにするなど、"飼い主(手)"=取り上げる ではなく、"飼い主(手)"=嬉しいモノをくれる 印象をつけてあげます。一度ついた印象を変えることは大変なので、あきらめずに時間をかけて信頼関係を取り戻しましょう。
口に入れたモノを取り除く方法としては、「リリース」コマンドを覚えさせるのがよいです。
拾い食いをしたらすかさず「リリース」と命令し、口のモノを出した時点でとびきり美味しいトリーツをあげて、たくさん褒めてあげましょう。
気のすむまでニオイを嗅がせる
拾い食いを回避するために、歩くスピードを上げて周囲のニオイを嗅がせずにいる場合、逆にこれが拾い食いの要因になっていることがあるようです。
犬は生まれながら食べられるものと食べられないものを判断する力があるはずなのに、石などの絶対に食べられないモノを飲み込んでしまうワンちゃんがいます。これはまだ"石"=食べられないという判断に至っていない状態(知らない興味から口に入れてしまう)かつ口に入れたものをすぐに飲み込む癖がついてしまっている可能性があります。
このパターンの根本の問題は、口に入れたものをすぐに飲み込む癖ですので、まずはこの改善に努めましょう。そして、食べられないモノの判断には、ニオイを嗅がせることが効果的です。口に入れたものを「リリース」できる状態になったら、安全な場所で、飲み込むことが難しい大きさの食べられないモノのニオイを嗅がせてあげることで、犬の興味が薄れて拾い食いが落ち着くケースもあります。
まとめ
以上が、犬の拾い食いを改善するためのトレーニング方法です。
散歩という毎日の習慣なので、トレーニングがうまくいかないとついつい叱ってしまったり疲弊してしまうこともあると思いますが、犬は叱られるより褒められた方が圧倒的にのびる動物です。
まずは飼い主が心に余裕を持つことが大切ですので、散歩の帰り道だけトレーニングの時間にしたり、曜日ごとにトレーニング無し日を設けるなど、リフレッシュできる時間を作ってくださいね。
ワンちゃんによってはトレーニングに時間がかかる場合もありますが、長いペットライフの中のほんの一部ですので、根気強くトレーニングを続けて信頼関係を築いていきましょう。