「健康診断でALTの数値が高いと言われてしまって、何か食事で気をつけることはあるだろうか」と不安を感じている飼い主さんはいませんか?猫は犬と異なり、ストレスや絶食だけで肝臓に影響が出やすいデリケートな動物です。肝臓の異常は早期の食事ケアが回復への近道になることがあります。
猫の肝臓数値が高くなる原因と背景
猫の健康診断や定期検査でALT(GPT)やASTなどの肝臓の酵素値が高いと言われることがあります。肝臓ケアの食事管理は早期から取り組むことが大切です。
猫の肝臓疾患と検査値の見方
猫の肝臓に関連する主な血液検査の指標は以下の通りです。
| 検査項目 | 意味 | 高い場合に疑う疾患 |
|---|---|---|
| ALT(GPT) | 肝細胞が傷ついているサイン | 脂肪肝・肝炎・肝腫瘍 |
| AST(GOT) | 肝細胞・筋肉のダメージ | 肝疾患・筋肉疾患 |
| GGT | 胆管・胆のうの障害 | 胆管炎・肝リパイドーシス |
| ALP | 胆汁うっ滞 | 猫では甲状腺機能亢進症でも上昇 |
猫に多い肝臓病として、肝リパイドーシス(脂肪肝)と胆管炎(胆管肝炎複合体)があります。特に脂肪肝は数日間の食欲不振がきっかけで急激に進行するため注意が必要です。
猫の脂肪肝(肝リパイドーシス)と食事の関係
猫は食事を数日間食べないと、体の脂肪が肝臓に急速に蓄積して脂肪肝を起こします。「太っている猫が急に食欲を失った」という状況は特に危険です。
肥満の猫はダイエットをさせたくなりますが、急な食事制限は脂肪肝を誘発するリスクがあります。猫のダイエットは獣医師の管理のもとで、ゆっくり体重を落とすことが鉄則です。
肝臓ケアに向いたフードの選び方
肝臓ケアに適したフードの条件
高品質・適量のタンパク質 猫はタンパク質を大量に代謝する動物です。タンパク質を過剰に制限すると逆に筋肉喪失や脂肪肝リスクが上がります。消化吸収率の高い動物性タンパク(鶏肉・白身魚)が理想です。
低脂肪〜中程度の脂肪 特に脂肪肝が疑われる場合は、高脂肪食を避けることが有効です。ただし猫は脂肪からもエネルギーを得る動物のため、極端な低脂肪食は避けましょう。
抗酸化成分の配合 ビタミンE・C・セレンは肝臓の酸化ストレスを軽減します。これらを含むフードは肝臓保護に役立ちます。
銅含量が低いフード 一部の猫種では銅の蓄積が肝臓に影響する場合があります。獣医師の指示に基づいて選びましょう。
脂肪肝を防ぐための食事管理
- 適正体重を維持する(過度の肥満を避ける)
- 急なダイエット・食事制限はしない
- フードを突然変えて食欲が落ちた場合は早急に対処する
- 食欲が落ちてきたら様子見せず、当日〜翌日には動物病院へ連絡する(猫は絶食が長引くと肝リピドーシスのリスクが急上昇するため)
避けるべき食材・行動
- タマネギ・ニラ・ニンニク(肝臓毒性)
- アルコール・カフェイン(肝毒性)
- 高脂肪の人間の食べ物
- 急なダイエット・食事制限
おすすめの療法食と具体的なフードの選び方
療法食の活用
ALT値が高い、または肝臓病と診断された場合は、ヒルズ・l/dやロイヤルカナン・肝臓サポートなど動物病院で処方される療法食を使用しましょう。
療法食は一般のフードよりも厳密に栄養バランスが管理されており、肝臓への負担を減らしながら必要な栄養素を確保することができます。
肝臓ケアフード選びのチェックポイント
- 高消化性の動物性タンパク質が主原料(鶏肉・白身魚など)
- ビタミンE・セレンなどの抗酸化成分が配合
- 適正なカロリーで過剰な脂肪が含まれていない
- 人工添加物・保存料が少ない(肝臓への負担を減らすため)
異常値が出たら自己判断でフードを変えるのではなく、まず獣医師に相談してから判断することをおすすめします。肝臓数値の種類や程度によって、適切な食事管理は変わってきます。
食欲不振への対応と日常ケア
食欲不振が脂肪肝を招くしくみ
猫が「数日間ごはんを食べない」状態は、想像以上に深刻なリスクを抱えています。猫は犬や人間とは異なる代謝の特徴があり、絶食が脂肪肝(肝リパイドーシス)に直結することがあります。
脂肪肝が起きる流れ
- 食欲不振により体内エネルギーが不足
- 体は脂肪組織からエネルギーを取り出そうとする
- 大量の脂肪が肝臓に運ばれる
- 肝臓が処理しきれず脂肪が肝細胞に蓄積
- 肝機能が急速に低下し、命に関わる状態に
特に肥満気味の猫ほどリスクが高く、ダイエット中の急な食欲低下は危険信号です。
食欲不振の猫への対応ステップ
愛猫の食欲がなくなったら、以下のステップで対応しましょう。
1日目:観察と工夫
- いつもと違うフードに切り替えてみる(嗜好性の高いウェット)
- フードを温めて香りを立たせる
- 静かな環境で食べさせる
24時間以上食べない場合:当日中に電話相談
- 猫は24時間以上の絶食で肝リピドーシス(脂肪肝)リスクが急速に高まるため、様子見をせず当日中に動物病院へ電話相談してください
- 特に肥満傾向の猫・シニア猫・基礎疾患のある猫はより早めの受診が必要です
- 元気・水分摂取・排泄の有無も合わせて確認し、獣医師に伝えましょう
48時間以上食べない場合:速やかに受診
- 連続48時間以上の絶食は肝リピドーシスのハイリスクです。自宅で様子を見ず、速やかに動物病院を受診してください
- 強制給餌や点滴、食道チューブによる栄養管理が必要になる場合があります
- 自己判断での絶食・過度な食事制限は絶対に行わないでください(AVMA・WSAVAも猫への長時間絶食は推奨していません)
肝臓ケア中の水分補給のポイント
肝臓のケアにおいて、水分補給はとても重要です。十分な水分は肝臓の老廃物排出を助け、回復を促します。
水分摂取量を増やす工夫
- ウェットフードを併用する(水分含量が約75%)
- フードにぬるま湯をかけて与える
- 水飲み場を複数設置する(場所によって好みが異なる)
- 流れる水(ペット用ファウンテン)を試す
- 電解質補給用のスープ(無塩)を活用する
特にALT値が気になる猫やシニア猫には、水分補給を意識した食事プランがおすすめです。
よくある質問(Q&A)
Q. ALT値がどのくらいから食事ケアを始めるべきですか?
A. 猫のALTの基準値や判断基準は検査機関・体格・併存疾患により異なります。基準上限を軽度でも超えた段階で食事を見直す価値はありますが、具体的な数値ラインや療法食の要否は自己判断せず、必ず主治医に相談して判断してください。他の項目(ALP・GGT・胆汁酸)や超音波検査所見と合わせて総合的に評価する必要があるため、異常値が出たら早めに動物病院を受診しましょう。
Q. 肝臓が悪い猫にタンパク質を制限すべきですか?
A. 昔は肝臓病=タンパク制限と言われましたが、現在は猫では基本的に制限しないのが主流です。むしろタンパク質が不足すると筋肉が落ちて脂肪肝を悪化させる恐れがあります。ただし肝性脳症(アンモニア上昇)がある場合だけは制限が必要になるので、獣医師の指示に従って判断しましょう。大切なのは量より「消化吸収の良い動物性タンパクを使う」ことです。
Q. 市販のサプリ(SAMe・ミルクシスル)を与える場合、何に注意すればいいですか?
A. 用量過多と人間用製品の流用、他薬との併用に特に注意が必要です。SAMe(サミー)やシリマリン(ミルクシスル)は肝細胞の保護作用が期待でき、動物病院でも処方されることがある成分です。ただし適切な用量や製品選定は体重・病態・併用薬によって異なり、人間用サプリは用量が多すぎることが多いため自己判断での使用は避けてください。必ずペット用製品を主治医の指示のもとで使用し、具体的なmg数や投与スケジュールは獣医師にご確認ください。
Q. 食欲が戻った後はいつまで肝臓ケアフードを続ければいいですか?
A. 肝臓は再生能力が高い臓器ですが、数値が正常化してもすぐに通常食に戻すのはおすすめしません。最低でも数値が安定してから3ヶ月〜6ヶ月はケアフードを継続し、再検査で問題なければ段階的に通常食に戻します。肝リパイドーシスを一度起こした猫は再発リスクが高いため、肥満予防と定期的な血液検査(半年〜1年に1回)を継続してください。
まとめ
猫の肝臓ケアは「良質なタンパク・低〜中程度の脂肪・抗酸化成分・食事の継続」が基本です。食欲が落ちた猫を放置することが脂肪肝の引き金になるため、早めに対処することが最重要です。
特に「急に食べなくなった」「体重が急激に落ちた」というときは、すぐに動物病院を受診しましょう。日頃から適正体重を維持し、急なダイエットをしないことが肝臓病の予防の第一歩です。異常値が出たら獣医師に相談し、適切な食事プランを立てましょう。